物理学解体新書

オームの法則

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オームの法則

オームの法則とは

電流は電圧に比例する。
この関係を表現したものがオームの法則だ。
オームの法則は、1826年にオーム(G.S.Ohm 1789-1854)によって発見された。


原子は原子核とその周囲を回る電子によって構成されている。
電子は負に、原子核は正に帯電しているため、両者間にはクーロン力が働く。
このため、電子は原子核に拘束されることになる。


原子が規則正しく多数結合した結晶が固体だ。
固体には「電流がよく流れる導体」と「まったく流れない絶縁体」がある。
(半導体もあるが、便宜上ここでは無視する)


導体と絶縁体との違いは、個々の原子の最外周の電子の挙動に起因する。


原子核と最外周の電子の結合が緩い場合、この電子は原子核の束縛を免れて隣接する原子の軌道に移動できる。
移動した先の原子でも、結びつきが弱いので、さらに他の原子に移動することもできる。
このように、特定の原子に拘束されない電子を自由電子という。


内部に自由電子を豊富に持つ物資が導体、自由電子が存在しない物体が絶縁体だ。
絶縁体では、原子核と最外周の電子の結合が強固なので、電子は他の原子に移動できないのだ。


導体に電圧を加えると、自由電子が正極へ向けて移動する。
この「自由電子の移動」が電流なのである。
電圧が大きくなれば、移動する自由電子の数もそれに応じて増えていく。


このことから、電圧Vと電流Iが比例することが確認できる。
V=RI
この関係がオームの法則だ。
比例定数Rを抵抗(または抵抗値)という。


物質によって自由電子の挙動は異なる。
このことは、「電流をより流しやすい導体」、「それほどよく流れない導体」が存在することを意味する。


オームの法則の式を変形すると、抵抗Rが大きいほど、電流が流れにくいことが読み取れる。
V/R=I
同じ電圧でも、抵抗Rの値が大きい物質の方が、電流は流れにくいのだ。
Rは、電流を流さないようにする働き(邪魔する働き)なので「抵抗」という。


オームの法則はこの後も、電圧降下等で登場する。




抵抗率

同じ種類の物質でも、導体の形状によって抵抗Rの値は変化する。


例えば、電流を流す距離が長い場合、抵抗Rは大きくなる。
電線の距離が長いほど、電流が流れにくくなるのだ。


電流を流す電線の断面積が大きいほど、抵抗Rは小さくなる。(流れやすい)
反対に断面積が小さければ、電流は流れにくい。
道路幅と交通量の関係でイメージすると理解しやすい。


つまり、「長い導線」「細い銅線」は電流が流れにくいのだ。


このことから、抵抗Rは
長さlに比例し、
断面積Sに反比例する
ことが確認できる。


これを式で表現したものが以下だ。
比例定数を抵抗率ρ(ロー)という。
R=ρl/S


抵抗率ρは、導体の形状に依存しない物質固有の値である。
単位は[Ωm]である。
抵抗率ρの逆数1/ρを電気伝導率σ(シグマ)と呼ぶ。


この式にV=RIを代入し変形すると、以下の式を得る。
I/S=σV/l


この式の左辺は電流を断面積で割っている。
その意味は「単位断面積あたりの電流の大きさ」だ。
この値を特に電流密度iという。


右辺のV/lは、電圧を距離で割っているので電場Eに相当する。
これらをまとめると、電流密度iは電気伝導率σと電場Eの積であることが確認できる。
i=σE


オームの法則において、抵抗値Rは形状に依存する。
しかし、上記の式はより一般化されたオームの法則の式であり、形状には依存しない。




温度と抵抗値

温度が高くなっても抵抗Rは大きくなる。
結晶内の原子の振動が、自由電子の移動を邪魔するからだ。
(半導体は温度が高くなると抵抗は低くなる。導体と逆だ。)


t℃のときの抵抗をR(t)とすると、温度と抵抗はおおよそ以下の関係式で表現することができる。

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2006/09/12



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