物理学解体新書

コラム

HOMEコラム>磁石

磁石

磁石は南北方向に向く。
北に向く側をN極、南に向く側をS極という。
磁石を引き付けるのだから、地球自体も巨大な磁石であることがわかる。


ここで、勘違いが起きやすい。
「地球の北極はN極ですか、S極ですか」と聞かれると「N極です」と答えてしまう人がいる。
きっと「北」から連想してしまうのだろう。
磁石のN極を引き付けるのだから、地球の北極はS極なのだ。


磁性の正体が究明される以前、なぜ磁石が南北方向を指すのかは謎であった。
「北極星が吸引する」「磁石でできた島がどこかに存在する」などが言い伝えられた。
特に船乗りたちは、磁石島への衝突を常に恐れ、警戒していたという。


初めて、磁性を科学的に検討したのは英国のギルバートであった。
彼は磁石を迷信から解き放ち、その成果を著書「磁石について De Magnete」として発行した。西暦1600年のことである。
この中で、ギルバートは、地球が巨大な球磁石であることや、磁性発現のメカニズムの推論など的確な洞察を与えている。


今日、多くの人が情報機器を操作するようになった。
情報機器を支えるデバイスの代表は半導体だが、磁性体も忘れてはいけない。
大容量の記憶媒体として欠かせないハードディスクは、「磁石の性質を活用した技術」の独壇場なのだ。


その他にも、モーターや、センサー類など、磁石を使用した技術の裾野は広い。
これらの研究開発の歴史を古くまで遡っていくと、みな「磁石について」に辿り着く。
ギルバートが磁気学の祖と呼ばれることに異論はないだろう。


今に至っても、実態も定かでない評判や噂話、言説に左右され、誤った行動や取越し苦労をする人は多い。
カルトや悪徳商法で財産を失い、人生を棒に振る人までいる。
我々は、磁石島に恐れおののいた当時の船乗りたちを「無知」だと評して笑うことはできない。

■次のテーマ:金星

このページのTOPへ



スポンサーリンク

2005/08/29



スポンサーリンク

Amazon.co.jpアソシエイト



スポンサーリンク

Amazon.co.jpアソシエイト