半導体物理学
正孔(ホール)
電流の担い手:キャリア
電流の正体は電子の流れだ。
金属の中には、原子核の束縛を逃れ自由に動き回れる電子(自由電子)が多い。
だから金属は電流が流れやすい
電圧がかかると、自由電子は一斉にプラス側へ向かって動きだす。
この動きが電流なのだ。
電流の担い手をキャリアという。
自由電子は、金属中のキャリアなのである。
金属のキャリアは自由電子だけだが、半導体の場合、キャリアは自由電子以外にもある。
それが正孔(ホール)だ。
自由電子はマイナス(負電荷)のキャリアだが、正孔(ホール)はプラス(陽電荷)を帯びている。
電子の抜穴:正孔
シリコンやゲルマニウムは4つの価電子を持つ。
シリコンやゲルマニウムの結晶では、これら価電子はすべて共有結合に寄与している。
このため、結晶内に余った電子はない。
一方で、原子はその温度に応じた熱エネルギーで振動している。
温度の上昇に伴い振動が増加する。
振動が大きくなると、一部の価電子が共有結合から離脱し、自由電子となるのだ。
この自由電子はキャリアとしてふるまう。
電圧がかかると移動するのだ。
これが電流だ。
温度がさらに上昇すると、自由電子の数がさらに増える。
つまり、温度が高いほど電流が大きくなる。
「温度の上昇に伴い抵抗値が低下する」という半導体の特性は、これに起因する。
共有結合から電子が離脱すると、その部分には正孔が残る。
もともと電荷がない場所から負電荷を持った電子が抜けたので、残ったのは正電荷ということになる。
これが正孔の正体だ。
正孔は電子が抜け出た穴であるが、正孔も電荷に引かれて動くことができる。
下のアニメーションでは白丸が正孔だ。
共有結合から離脱した電子が、正孔と結合する。
これが繰り返されるので、正孔が左から右に向かって移動していくことになる。
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2005/06/03
2016/09/04