物理学解体新書

状態量と状態方程式

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状態量と状態方程式

状態量と状態方程式
ある系の状態を示す特性を状態量という。
このような説明をよく見かけるが、非常に分かりにくい。


「ある系の状態」とは、ズバリ「シリンダ内に気体が充満している状態」と割り切ることにする。
この「シリンダ内の気体」がどういう状態であるかは、温度、体積、圧力の3つで表現できる。
温度、体積、圧力が状態量なのだ。


「シリンダのピストンを押す」、「シリンダを加熱する」等の操作によって、シリンダ内のエネルギーが増加する。
その結果、温度、体積、圧力が変化する。
系内部のエネルギーの変化は、状態量の変化となって現れるのだ。


ピストンを押すことは、シリンダ内の気体に仕事をすることであり、加熱はを供給することである。
シリンダ内の気体は、仕事または熱を通してエネルギーを増減させるのだ。


これまでに、温度、体積、圧力、仕事、熱が登場した。
温度、体積、圧力は状態量であるが、仕事は状態量ではない。
この区別は明確にしておく必要がある。


内部のエネルギーの状態を反映して温度、体積、圧力の値が変化する。
仕事、熱は「エネルギーの状態」ではなく、「エネルギーの出入りの形態」なのだ。
エネルギーは熱や仕事の形態を装って、系内に出入りする。
その結果、温度、体積、圧力の値が変化するのだ。


これは、シリンダに取り付けられたメーター類をイメージすると理解しやすい。
シリンダ内の気体の様子を知るためには、温度計や圧力計が必要である。
気体の体積はピストンの位置を示す目盛りで確認できる。


温度計や圧力計、ピストンの位置の目盛りは、すべて状態量を測るメーター類である。
「この気体は今、どれくらいの圧力なのだろう?」といった疑問には、圧力計が答えてくれる。


一方、「熱計」や「仕事計」はない。
これらは、状態量ではないからだ。
状態でないから、状態量として測れないのだ。
「この気体は今、どれくらいの仕事なのだろう?」といった疑問が成り立たないことは容易に理解できる。


しかし、「この気体には今、どれくらいの仕事がなされたのだろうか?」という疑問は成り立つ。
仕事は出入りを示す指標だからだ。
同様に熱量計は、熱の出入りを測る計器であって、状態を計ることはできない。


一定量の気体において、温度T、体積V、圧力pは相互に関係している。
温度T、体積V、圧力pのうちの二つが決まると、残りの一つも決まってしまうのだ。


ここでボイルシャルルの法則を思い出して欲しい。 Rを気体定数とすると、nモルの気体の状態は以下の状態方程式で表現される。
pV=nRT


この状態方程式から、まさに「一定量(nモル)の気体では、三つの状態量のうちの二つが決まると、残りの一つも決まってしまう」ことが解釈できる。


くどいようだが、状態方程式には温度T、体積V、圧力pは登場するが、仕事W、熱Qは現れない。
「仕事、熱は状態ではない」ということが、ここでも理解できる。
状態方程式とは、非常に納得のいくネーミングである。

■次のページ:熱力学の第一法則

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2006/09/13



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