物理学解体新書

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ヘリウム

元素はそれぞれ、固有の色の光を出す。
この光を線スペクトルという。
光を注意深く観察し、線スペクトルを見出せば、どんな元素があるのか判別できる。
線スペクトルを観測すれば、遠くの星の成分も地球にいながら判別できる。


1868年、皆既日食を観測していたヤンセン(仏)は、未知の線スペクトルを太陽光の中に発見した。
同様の研究をしていたロッキー(英)は、この線スペクトルは太陽にしか存在しない未発見の元素によるものと考えた。


ギリシア神話に登場する太陽神をヘリオスという。
これにちなみ、この未知の元素はヘリウムと命名された。
アルミニウム、カルシウム、ナトリウム等、語尾が「〜ウム」となっている元素は本来金属である。
発見当時、ヘリウムは金属であると考えられたためこの名になった。


ヘリウムは水素に次いで宇宙で2番目に多い元素である。
(ただし、地球上に限定すれば70番目くらい)


ヘリウムは大気中や鉱物中にも存在する。
ミネラルウォーターにも溶け込んでいる。
「太陽にしかない」というのが、大きな誤りだったことが 後に分かる。


ヘリウムガスは空気に比べて、分子スピードが速く、密度は低い。
このため、ヘリウムガスを吸引すると、声帯の性質が変化してアヒルのような声になる。
ヘリウムは血中に溶けにくい上、血管内に気泡もできにくい。
だから声を変えるオモチャとして使用できるのだ。
(分子と表記しますが、ヘリウムは原子1個で分子の相当)
この安全な性質を利用して、酸素ボンベにも封入されている。


ヘリウムは空気よりも軽い。
気球や風船の浮力ガスとして利用される。
一方でゴムやガラスを透過する性質を持つ。
原子サイズが小さいからだ。
ヘリウム入りの風船が、数日を経ずして しぼむのはこのためである。


ヘリウムを液化すると極低温(-270℃程度)が得られる。
このため、超伝導磁石用の冷却剤として、リニアモーターカーでも使用されている。
100年以上の歴史を持つ飛行船と、未来技術のリニアモーターカー。
どちらもヘリウムなしでは動かない。


ヘリウムガス(産業用、医療用、オモチャ)は、天然ガスから分離・精製される。
産地は、主にアメリカやアルジェリアである。
決して、太陽から回収したものではない。

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2005/10/22



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