会話で分かる考察の書き方のテクニック
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テクニック1:実験の誤差要因の考察
ある日の実験課題終了後のこと。
いつものように、実験グループでヒソヒソと考察のアイデア出しをやっていました。
そこへ、たまたま通りかかった大学院生が話しに入ってきたのです。
その日は、指導教員に急な出張が入り、代替にその院生が実験課題の指導にあたっていたのです。たぶん、ボクたちが考察で悩んでいることに気が付いて、話に入ってきたのでしょう。
院生はこんなアドバイスをくれました。
院生
「どんな実験でも、見込みを持って行っているはずだよね。
見込み通りにならなそうな要因を書き出し、その要因がどうだったかを論じればそれで考察だよ。」
ボク
「ちょっと、よく分かりませんが」
院生
「では、どんな見込みを持ってこの実験をやったのかな?」
ボク
「テキストの通りにやったのですけど・・・」
院生
「そうだね。"テキストの通りにやれば、うまくいくはずだ"という見込みを持っていたんだね。」
ボク
「まぁ・・・そうです。」
院生
「じゃ、実験をうまく行かせない要因って何だろうか?」
ボク
「・・・」
院生
「たとえば、実験中の気温の変化だ。装置の発熱も回路の抵抗値を変化させるよね」
ボク
「計測者の読み取りのクセとかもですか?」
院生
「そうだよ。そういった要因はすべて実験精度を邪魔しようとしている要因だ。実験精度を邪魔しようとする要因をリストアップし、それぞれが実験結果にどのように影響したかを個々に論じれば考察になるんだ。」
ボク
「確かにそうですが、今日の実験は、テキスト通りの結果、つまり見込み通りになりました。結局、実験精度を邪魔する要因は作用しなかったと思いますが。」
院生
「だからさ、"気温の変化"とか、"装置の発熱"とかの要因が考えられたけど、実験中は対策をうったので、これらの要因を押さえこめたと考察に書けばいいんだよ。」
ボク
「???? もう少し詳しく教えてください。」
院生
「実験はもともと、見込みを持ってやるものだ。その見込みの中には、実験精度を邪魔する要因も見込んでおく。さらにその要因もどう抑え込むかといった対策も見込めるはずだよね。
だから、実験結果が理論値通りであったら、 "コレコレの要因が考えられたので、コレコレの対策を打った。その結果、精度を確保できた。" と書けばいい。
反対に、実験結果が理論値から外れたら、 "コレコレの要因が考えられたので、コレコレの対策を打った。しかし、精度を確保できなかった。
精度を確保するために、今後はコレコレの対策を実施しようと考える" とすればいい。」
ボク
「・・・! では、実験がうまく行っても、行かなくても、同じように考察になるというわけですね!」
院生
「そうだよ。装置の発熱だって、装置を引き離し、実験中異常な発熱がないか適時手で触れて確認するのだって対策だ。
実験がうまく行けば、"適時触覚で確認したので、装置の異常発熱がなかったことは明白である"と考察に書く。
うまく行かなければ"適時触覚で確認したところ、装置の異常発熱が確認された。この異常発熱が実験結果に影響を与えた可能性が大きい"と考察に書けばいい。
もちろん、装置の発熱以外にも、実験精度を邪魔する要因はいくつもある。湿度の変化や、ケーブルの抵抗値、計測器のドリフト、ネジの締め具合もだよね。こられについて個々に実験への影響を論じれば、考察のネタには困らないよね。」
ボク
「確かに、その通りです。でも、実験前にそこまで見込みを考えてないですよ。」
院生
「それが、本音とタテマエの違いだよ。もし、今の話を実験前に知っていたら、きっと事前にアレコレ要因やその対策を考えたはずだよね。さも、実験前から見込みを持っていた振りして考察を書けばいいんだよ。」
ボク
「とても参考になりました。ありがとうございました。」
[..実験の誤差要因についてさらに詳しく..]
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