物理学解体新書

温室効果[3]

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温室効果のメカニズム

金星の地表は気温500℃に達する灼熱地獄である。
これは太陽に近いからではない。
金星の大気の主成分である二酸化炭素が、温室効果を起こしているからだ。


水蒸気、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素などは、温室効果をもたらす気体である。
これらを温室効果ガスとよぶ。
金星に限らず、温室効果は大気中の温室効果ガスによって生じる。


地表から出た放射は、何もなければそのまま宇宙へと出て行くことになる。
これが放射冷却だ。
ところが、温室効果ガスがあるとそうはならない。
放射は一度、温室効果ガスに吸収されるのだ。

温室効果ガスによる吸収

放射を吸収した温室効果ガスは、今度は全方向へ向けて放射を出す。
ということは、その中の一部は、地表へ戻っていくことになる。
この放射がまた地表を暖めるのだ。

温室効果ガスからの放射

そのまま宇宙に逃げていくはずだった熱を、捕まえて地表に返すのが温室効果ガスの役割だ。
温室効果ガスの量が適度であれば、地球環境を適度な温度に保つことに寄与する。


しかし、温室効果は両刃の剣だ。
大気中の温室効果ガスの量が多くなると、危険極まりない。
入ってくる熱よりも、出て行く量が少ないのだから、大気圏内の温度がどんどん高くなる。
高温で水蒸気が増えれば、さらに温室効果に拍車がかかる。


気温も海水温も上昇し、海流が変わり、気候が変動する。
漁獲量や農作物の収穫にダメージが出る。
氷が溶けて海面が上昇し、陸地が水没する。
人類どころか生命全体の存在にとって脅威となる。


夜明け前や日没後の薄明の中で、金星はひときわ明るく輝く。
表面を覆っている濃い大気のせいだ。
金星は、地球がこのまま進んでいく先の姿を、我々に見せているのかもしれない。

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2005/08/25



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