ミリカンの実験
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ミリカンの実験の原理
霧吹きで霧状の非常に小さな油滴を作る。
これに放射線(エックス線)を当てると、空気の電離によって油滴が帯電する。
油滴は自由落下するが、空気の抵抗によって減速し、重力と釣り合って一定の速度\( v_0\)になる。
油滴に力が作用していない状態なので、加速せず一定の速度なのだ。
空気による抵抗力\( F_0\)は油滴の速度と油滴の半径\(r\)に比例する。 \[ F_0=krv_0 \] 抵抗力\( F_0\)が重力\(mg\)と釣り合うので次式となる。 \[ mg = krv_0 \] 質量\(m\)は密度\(\rho\)と体積\(V\)の積だ。 \[ m = {\rho}V \] 油滴を半径\(r\)の球体だとすると、球の体積\(V\)は\(\displaystyle \frac{ 4 }{ 3 } {\pi}r^3\)であるから、抵抗力\( F_0\)との釣り合いは次式となる。 \[ \rho \displaystyle \frac{ 4{\pi}r^3 }{ 3 } g = krv_0 \] 上式を変形することで、油滴の半径\(r\)を示す式となる。 \[ r =\sqrt{ \displaystyle \frac{ 3 }{ 4 } \frac{ k v_0 }{{\pi}{\rho}g} } \]
密度\(\rho\)、比例定数\(k\)は物性値として知られているし、速度\( v_0\)は油滴の動きを観察することで測定することができる。
これらの情報から油滴の半径\(r\)を算出することができるのだ。
ここで、電場\(E\)を下向きに与える。
油滴は負または正に帯電しているので、負に帯電した油滴が速度\( v_1\)で上昇する。
このときの釣り合いは次式となる。
\[
\rho \displaystyle \frac{ 4{\pi}r^3 }{ 3 } g + krv_1 -qE= 0
\]
これに油滴の半径\(r\)を代入し、\(q\)について式をまとめる。
\[
q = \displaystyle \frac{ k }{ E } (v_0+v_1) \sqrt{ \displaystyle \frac{ 3 }{ 4 } \frac{ k v_0 }{{\pi}{\rho}g} }
\]
これにより、既知の値から帯電した油滴の電荷を実験で求めることができるのだ。
実際にミリカンは何回も実験して、多数の\(q\)の値を求めた。
そして\(q\)は、ある値\(e\)の整数倍であることが分かった。
\[
q = e , 2e , 3e , 4e , 5e ,\cdot\cdot\cdot
\]
上記からから、電荷には最小単位の量\(e\)があることが分かったのだ。
この\(e\)を素電荷という。
今日、素電荷\(e\)は高精度で測定されており、以下の値となっている。 \[ e = 1.60217662 × 10^{-19} [C] \]
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2018/08/24