物理学解体新書

誘電体

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誘電体と誘電分極

誘電体とは

電流の流れ方に応じて、物質は導体、半導体、絶縁体に分類される。
感電防止の被覆に利用されるのは絶縁体だ。
物質内部に自由電子を持っていないため、絶縁体は電気を通すことができないからである。

電流が流れない代わりに、外部から電圧が加わると絶縁体には誘電分極という現象が起きる。
誘電分極によって生じる絶縁体の働きを考える場合、絶縁体とは言わずに誘電体という。
絶縁体とは別に誘電体という物質群が存在するのではない。

同じ物質であっても、電流が流れないという特性にフォーカスした場合を絶縁体、誘電分極にフォーカスした場合を誘電体というのだ。



誘電分極とは

導体を電場の中に置くと導体の表面に電荷が出現する。
これは導体内の自由電子が電場の作用で移動したからだ。
この現象が静電誘導だ。

自由電子を持たないはずの絶縁体(誘電体)を電場の中に置いた場合も、表面に電荷が出現する。
この現象を誘電分極という。
誘電体中の極性分子が向きを変えたり、原子中の電子の分布が偏ることで誘電分極が起きるのだ。

原子核の周囲の電子はキチンとした軌道を回っているのでがなく、雲のように広がって分布する。
これを電子雲という。
電場がなければ、電子雲は原子核を中心に対称に分布する。

中性の原子(分子)であっても、電場の作用を受けると電子雲の分布が偏ってしまう。
このため原子(分子)のある部分はプラスだが、別の部分はマイナスになるのだ。
この現象を分極という。

絶縁体(誘電体)を電場の中に置くと、絶縁体(誘電体)を構成する原子(分子)が、個々に分極を起こす。
分極を起こしても、絶縁体(誘電体)内部の原子(分子)の電荷は、隣の原子(分子)の電荷と打ち消し合うので、電荷はゼロになる。
しかし、絶縁体(誘電体)の表面は打ち消されないので、電荷が残る。
結果として電場の影響で絶縁体(誘電体)の表面に電荷が出現したことになる。
これが誘電分極である。



誘電分極とクーロン力

真空中で、距離rを隔て、二つの電荷Q1、q2が存在する場合、二つの電荷の間には、以下の式に従うクーロン力が働く。
ε0は真空の誘電率だ。

次式は、真空中の点電荷Qから距離rの場所の電場の強さEを示している。k0は真空中での比例定数だ。
\[ E=k_{ 0 }\displaystyle \frac{ Q }{ r^2 } \]

「真空中での」と書いたことには、理由がある。
点電荷の周囲が誘電体で満たされていた場合、電場Eの値は小さくなる。クーロン力Fの値が小さくなる。
つまり、誘電体があるとクーロン力が弱まるのだ。

例えば、二つの電荷が水中にある場合、クーロンFの大きさは真空中に比べて約1/80となる。
誘電体中では、誘電分極が原因となってクーロン力が弱まる(電場が小さくなる)のだ。
また、クーロン力が弱まる度合いを比誘電率という。

比誘電率と、誘電分極によってクーロン力が弱まる仕組みを次ページで解説する。

■次のページ:比誘電率

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2005/06/18
2016/11/13



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