二重スリット実験
1個の電子での干渉縞
電子銃から電子1つずつ放っても、二重スリットの向こう側のスクリーンに干渉縞が出現する。
このことから、電子は1個で波として振る舞ったことになる。
1個の電子はスクリーン上に1個の点を残すだけだが、この実験を繰り返すと、スクリーン上に点がだんだんと増え、やがて干渉縞が出現するのだ。
1個の電子は、波として振舞いつつ、右のスリットを通過しつつ、同時に左のスリットを通過したことになる。
これが量子論特有の重ね合わせで、右のスリットを通過する電子と左のスリットを通過する電子が重なりあったのである。
この結論は、日常の感覚からは受け入れにくい。
スリットを通過している瞬間の電子を確認するとしよう。
スリットの近くに測定器をおいて、通過する電子の存在を確かめればいい。
ところがこの方法を使うと、干渉縞ができないのだ。
一般に測定する場合は、測定の対象物に何らかの刺激を与えることになる。
例えば、水温を測るとき、温度計そのもののへの熱の出入りがあるから、測定対象の温度がわずかに変化してしまうのだ。
モノの長さを測るときも、対象物にスケールを当てるのでこのときに力で対象物がわずかに変形するのである。
電子の位置を測定するときも、電子に対して刺激を与えなくてはならない。
この場合は光だ。ところが光を当てると、電子ははじかれて位置を変えてしまう。
電子の位置を調べようとする行為で、電子の位置が変わってしまうのだ。
このため、測定の影響で電子はスリットを通過することができず、干渉縞も生じない。
観測した瞬間に波が収斂するので、波を観測することができないのだ。
これが観測問題の一つの例である。
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2017/05/07