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実験レポートの書き方

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考察を書くポイント

前節で、文章をスラスラ書く秘訣を紹介した。
以下がそれである。
■豊富な読書で身に着けた、知識と表現力
■普段からのネタ探しと文章展開のイメージング
■他人の文章の分析を通して、評価者の好みの把握

ここでは、これら3項目を活用し、考察をスラスラ書く方法を検討しよう。
ただし、一朝一夕にはできない。普段からの準備が必要である。

そうは言っても、提出期限が迫っていて、すぐにでも考察を書きたい人は、「考察の書き方のコツ」を参考にして欲しい。

再三、説明したが、考察はレポート作成時に考えるのではない。
実験の目的」「実験の原理」「実験の方法」などは、予習として実験前に書いておく。
そのとき、考察のネタを準備しておく。
実験中は測定と平行して、考察のネタを目ざとく見つけ、追加で仕込むようにしたい。

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この「考察のネタ」を見つける目を養うのが読書だ。
専門書だけでなく、発明発見の歴史や、一般向けに書かれた科学の解説書でもいい。
例えば、「ボルダの振り子」の実験では、振幅から重力加速度を求める。

このとき考察では「ボルダの振り子」以外の方法で、重力加速度を求める実験について言及してもいいはずだ。
落体の法則で有名なガリレオは、ゆるやかな斜面上で物体をゆっくり転がすことにより、落下中の物体が加速することを知った。
この方法を使用すれば、斜面上の加速度と、斜面の傾斜角から重力加速度を算出することができる。

「ボルダの振り子」の実験で求められた重力加速度の値を補完する意味で、「ガリレオの斜面」を使用して重力加速度を求め、両者を比較するというのも、興味深い実験のテーマである。
このような点で論じれば、考察の幅も広がるし、行数も稼げるというものだ。

実験のテキストで「ボルダの振り子」のページには、おそらく「ガリレオの斜面」の話は記載されていない。
テキストにない情報を持ち込むには、ふだんから幅広く読書し、科学に関する知識を蓄えておく必要がある。

読書に十分な時間がとれない場合は、Q&Aサイトの科学分野、物理分野に登録するのも一つの方法だ。
Q&Aサイトに登録される質問を読んでおくだけでも、科学的な関心に幅を持たせることができる。
Q&Aサイトは、読書に充てる時間の不足を補うためなので、本来は時間を確保し、読書したほうがいい。その上さらにQ&Aサイトで補うのだ。

雑学程度の知識でもいいから、科学に関するエピソードを日ごろから蓄えておくことだ。

講談社ブルーバックスをはじめ、各社から出版されている新書類を読んでおくのがいいだろう。
くどいが、再度書く。
読書で知識を増やしておくと、考察を書くときに有利なのだ。

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先の「ガリレオの斜面」の話にもどろう。
科学の一般書で「ガリレオの斜面」の説明が書いてあっても、「この話は、考察に使えます」とは書いていない。
「これは、考察に使えそうだ」と自分で気付くしかないだろう。

気付くためには、「今後、どんな実験が待ち受けているのか」を知っておく必要がある。
実験の前日になって「明日は重力加速度の測定か・・・」などと初めて知るより、実験のカリキュラム全体を事前に把握しておくほうが、「考察ネタ」に気付きやすい。

新学期に、実験のテキストを入手したら、まず一度通読しよう。
これによって、今後待ち受ける実験を知ることができる。
この段階では、もちろん実験課題の詳細まで理解する必要はない。

小学校の作文新聞投稿のネタは、生活全体からネタをピックアップできるが、実験レポートの考察の場合は違う。
主に、科学関係の書籍やサイトにネタは潜んでいる。

「今後待ち受ける実験」がおおよそ頭に入った状態で、書籍やサイトに日ごろからあたっておけば、「これは、考察ネタになるな」といった情報が目に付き、考察のネタがかなりストックできる。
そして、どのように論じるのかを頭の中でイメージしておくことだ。



このようにしておけば、実験の予習のときに、すでに考察の候補が出揃うことになる。
実験しながら、さらにベストな考察ネタを仕込みつつ、実験レポートに記載するネタを決定すればいいのだ。
こうなると、「ネタがない」ではなく「どのネタを採用しようか」といった贅沢な悩みにも発展する。



没ネタは、考察ネタに窮する他の学生に情報提供してもいいだろう。
(報酬はどうするかは、当事者同士で決めてください)



繰り返しになるが、考察は実験レポートの提出前日に考えるものではない。
日ごろからネタをストックしておくことが肝心である。
小学校時代の作文名人が、日ごろからネタ収集のアンテナを張り巡らし、文章展開をシュミレーションしていたことを忘れてはいけない。

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もし、他人の実験レポートが入手できるのであれば、じっくり読んでみることだ。
考察ネタをそのままいただくためではなく、「落ちる実験レポート」「受かる実験レポート」を分析するためである。

「優秀作文集」と違って「優秀実験レポート集」は発行されていない。
その上、他人の実験レポートを入念に分析する機会は少ない。
だから、評価する側の好みや評価基準は、なかなか見出せないものである。

見出せないのであれば、感じ取るしかない。
少ない機会を捉えて、できるだけ他人の実験レポートを読むチャンスを得たいものだ。
そこで、相互に他の学生と実験レポートを見せ合うのも一つの方法だ。

お互いにマネしてしまうと、評価者にはバレバレなので、これは厳禁である。
ぜひ、コピペ&丸写しの誘惑に打ち勝ってもらいたいものである。
コピペをやって、いいことは一つもない。

実験レポート提出後に、もう一部プリントし、交換し合うのがいいだろう。
目的は、今回書くネタのヒントを収集するのではない。

今後のために、文体や表現、論の展開を勉強するためである。
自分の書いた内容と比較すれば、あらたに気付く項目もあるに違いない。
このときデータを交換するのは考えものだ。
コピペの誘惑に勝つためには、他人のデータは持たず、紙に留めることだ。

一度試したいのは、他学科等異なるカリキュラムの実験のレポートを読むことである。(入手は難しいと思うが)
実験レポートは、知識が少なくい人でも、読みながら追試ができることが望ましい。
カリキュラムが異なれば、分からないことも多い。

そのような状況で、読んで分かるレポートがあれば、それは良いレポートなのだ。
もちろん、できの悪いレポートであっても、「どこがどのように悪いのか」「どのように改善すればいいのか」等を考えれば、考察ネタや論の展開など、いい勉強課題になるだろう。

ここでは、中長期的に見た、考察のトレーニング方法を紹介した。
すぐにでも書きたい場合は、「レポートの記載項目の説明>考察」を参考にして欲しい。

■最初のページ:実験レポートの書き方:目次

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2005/09/04
2016/07/30



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