物理学解体新書

有機EL技術入門[1]

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有機ELとは

物質がエネルギー(電磁波、熱)を受け取り、発光する現象をルミネッセンス (luminescence)という。
特にエネルギーが電界で供給されて光る場合が、EL (エレクトロルミネッセンス)である。


従来から、無機材料を利用したエレクトロルミネッセンスが知られていたが、近年になった有機材料を利用したエレクトロルミネッセンスの技術が普及してきた。
これを有機ELという。
海外ではOrganic ELではなく、Organic Light Emitting Diodeと表現する。


発光材料の違いで、有機ELと無機ELとネーミングされているように見えるが、両者の発光の原理はまったく違う。


無機ELは無機化合物(硫化亜鉛等)の薄膜をガラス基板上に蒸着したものである。
無機ELでは、加速された電子を利用する。
加速には、200V程度の電圧が必要である。


これに対し有機ELの原理は発光ダイオード(LED)に似ている。
電流を注入して発光させるので、10V以下の直流電圧で十分である。


有機物(プラスチック、ゴム等)は本来、絶縁体であるので、電気は非常に流れにくい。
有機物に高電圧をかけ、わずかに光らせる研究が1960年代から、細々と継続されていたが、照明として使用できるレベルには到底及ばなかった。


転機は1987年に訪れた。
この年、イーストマンコダック社のTang氏が、短時間ながら有機物の発光を成功させたのだ。
それ以後、有機ELの基礎研究とデバイス開発の熱が高まった。


現在、有機ELは、ディスプレイ、照明、電子ペーパーとしての普及が期待されている。


色鉛筆は、24色を一つのセットとして市販されている。
(他に12色、36色のセットもあるが、ここでは24色として話を進める)
色鉛筆にとっての基本色は24種類が用意されているということだ。
この基本色に含まれない色を、描きたい場合は、基本色を組み合わせて表現する。


微妙な色合いの違いや、濃淡差を含めれば、世の中に色の種類は無数にある。
色鉛筆は、これを24色の組み合わせで無数の色を表現するのだ。
世の中のすべての色を用意することができないからだ。


有機ELを利用したカラーディスプレイ、CRT式や液晶のカラーテレビは、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色の光を基本色として、無数の色を表現する。
RGBを光の三原色という。
(色の三原色YMCもあるが、光の三原色とは違う)


画像を構成する、微小な点を画素という。
画面上ではRの点、Gの点、Bの点が隣り合って、一つの画素が構成される。
Rの点、Gの点、Bの点の発光を個別にコントロールすれば、各画素の色を作ることができる。


液晶そのものは発光しない。
液晶ディスプレイでは、液晶の背後にあるバックライトが一様に発光しているのだ。
液晶の各画素は、シャッターの役割を果たしている。画素が閉じるとバックライトが見えず、画素が開くとその画素はバックライトのため輝いて見えるのだ。
視野角による画像の劣化(斜めからでは、画像が見にくい)も避けられない。


これに対し、有機ELディスプレイは、画素そのものが発光する。
このため、バックライトが不要になり、薄くて軽くなる。消費電力もセーブできる。
携帯電話の画面や、デジカメのファインダーに導入すればメリットは大きい。


液晶画面では、画像を動かす場合、シャッターを構成する分子を動かさなくてはならない。
有機ELは分子の移動がないため、像の動きはキレがある。
自分自身が発光するため、視野角による画像の劣化がないし、高いコントラストが得られる。

■次のページ:発光の原理

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2006/02/11



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