作用・反作用の法則の疑問
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力士と子供が押し合っても等大逆向きなのか?
力は単独では存在できない。常に等大逆向きの力とペアになって存在するのである。
これが作用・反作用の法則である。
この「等大逆向きの力がペア」がクセものであり、理解しにくさ・分かりにくさの原因になっている。
ここでは、作用・反作用の法則に関して次の3つの疑問を解き明かすことにする。
力士と子供が押し合っても等大逆向きなのか?
力士と子供が正面から突き合った場合、勝負は明らかだ。
力士はビクともしないのに、子供は弾き飛ばされてしまうだろう。
この場合も作用・反作用の法則によって、「力士が子供を押す力」と、「子供が力士を押す力」は、同じ大きさなのである。
つまり、「力は等大」なのだ。
これは日常の感覚では、理解しにくい。
「力士の力が圧倒的に大きい」と考えるのが常識だからだ。
作用・反作用の法則で「力は等大」なのに、なぜ勝負が着くのであろうか?
この子供と力士の勝負が宇宙空間で行われたと考えよう。
宇宙空間は、重力や空気抵抗がないため、物体の運動の性質が単純化できるのである。
突き合った瞬間に、子供は後に勢い良く飛ばされるが、同時に力士も反動でゆっくりと後退する。
宇宙では慣性の法則が顕著に表れるのでこの状態は継続する。
力士と子供は、それぞれのスピードを保ったまま、お互いに離れていくのである。
「子供のスピード」は「力士のスピード」よりも速い。
このスピードの違いは、力士と子供の質量の違いによって生じる。
突き合った直後から、子供と力士は離れていくが両者の運動量は保存される。
つまり
「子供のスピード」×「子供の質量」=「力士のスピード」×「力士の質量」
の関係が保たれるのだ。
(ちょっと乱暴だが、「速い」×「軽い」=「遅い」×「重い」と思えば直感と合う)
子供が10kg、力士が100kgだとすれば、質量の比は10倍だ。
だから、子供は力士の10倍のスピードで飛ぶことになる。
ここで注意すべきは、宇宙では「力士も10分の1のスピードで飛ぶ」ということである。
地上の勝負では力士はビクともしないように思えるが、重力や空気抵抗がなければ、力士も突き合いの勝負で後にゆっくりと(10分の1のスピードで)動くのである。
質量は動きにくさの指標でもある。(慣性質量という。)
力士の質量は子供の10倍もあるので、動きにくさも10倍なのだ。
これを地上の勝負にもってくると、この傾向は著しい。
質量が大きければ地面との摩擦抵抗も大きくなる
質量差で10倍も動きにくい上、摩擦抵抗も加算されるので、なおさら力士は動きにくいことになる。
力士と子供は、突き合いで同じ多きさの力を受ける。
子供か軽い(質量が小さい)ので、簡単に動いて(弾き飛ばされて)しまう。
しかし、力士は重い(質量が大きい)ので、動いたようには見えないのだ。
力士と子供の突き合いで力士が圧勝するのは、「力士の質量が大きいから」である。
決して「力が強いから」ではないのだ。
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