剛体の力学とは
質点の力学を問い直す
物体に加わる力と、物体の動きの関係を系統立てて解釈するのが力学である。
「質点の力学」では、物体を「大きさはなく、質量が一点に集中しているもの」とみなして論を展開した。
あらためて、「質点の力学」で登場した主な式を見てみよう。
運動方程式 | \[F=ma\] |
万有引力の法則 | \[F=G\displaystyle \frac{ m_{1} m_{2}}{ r^2 }\] |
運動量保存の法則 | \[ m_{1} v_{1}+m_{2} v_{2}=m_{1} v'_{1}+m_{2} v'_{2}\] |
力学的エネルギー保存の法則 | \[\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }mv_{1}^2+mgh_{1}=\frac{ 1 }{ 2 }mv_{2}^2+mgh_{2}\] |
これらの式には、物体の質量は登場するが、物体の形状、サイズ、材質が出てこない。
質点の力学にとって「物体の形状、サイズ、材質」はまったく無関係なのだ。
物体がどんな形状、どんなサイズ、どんな材質であろうとも、それらは質点の力学に何ら影響を与えないのである。
地球や火星は岩石を主成分とする小型の惑星である。
木星、土星、天王星などは非常に大型の惑星で、ガスでできている。
天体の大きさや、成分が異なるのに、各惑星に万有引力の法則が等しく適用できるのは、万有引力の法則が、大きさや材質から完全に独立しているからである。
質点の力学において「大きさは無視して考える」という表現がある。
この表現について、「大きさを考えると計算が複雑になるので、大きさがないと見なして計算しましょう。大きさを考慮しないで計算しても誤差は大したことありませんよ」と解釈する人が時々いるが、これは誤りだ。
上記の諸法則にとって、大きさ、サイズ、材質は元々から存在していないのである。
次のページで、大きさ・サイズが関わってくる力学の例を紹介する。
■次のページ:質点の力学が通用しない現象
スポンサーリンク
2005/06/25
2010/02/13