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コンデンサー技術入門[6]

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過渡現象と時定数

コンデンサに電気を蓄えることを充電、電荷を放出することを放電という。
実際の回路でコンデンサを充電、放電させる場合には、抵抗R をコンデンサと直列に接続するのが一般的だ。
仮に抵抗Rがないとすると、スイッチを入れた瞬間に、大電流が流れコンデンサや他の部品にダメージを与えるからだ。
抵抗RとコンデンサCが直列に接続された回路をCR回路という。


CR回路に電池を直列に接続し、スイッチを入れる。
こうすると、電池の電極から電荷がコンデンサに移動しコンデンサの極板に蓄積される。
電荷が極板に蓄積されるにつれ、電池からの電流の流入は少なくなってくる。
極板の電荷に反発され、移動しにくくなるからだ。


この電流の流入はコンデンサの極板間の電圧が電池の電圧と等しくなるまで続く。
コンデンサの極板間と、電池の電圧に差がなくなれば、電荷が移動しなくなるからである。


コンデンサの極板間の電圧は、スイッチを入れた直後は急速に上昇する。
時間の経過とともに、このスピードは緩んでいく。
これは、電池からコンデンサに流れ込む電流は、スイッチを入れた直後は急速に、その後だんだんと少なくなっていくからだ。
このように、ある状態から別の状態に自然に移行する現象を過渡現象という。


電流の流入以外にも、過渡現象は自然界に多く存在する。
零した一滴のインクが、コップ全体に拡散していく現象や、熱を持った物体が自然に冷却する現象も過渡現象である。


スイッチを入れた直後から、電源と同等の電圧に落ち着くまでに要する時間(仮に所要時間)は、回路の静電容量Cと抵抗値Rに依存する。
抵抗値が大きければ、一度に流れる電荷が少ないので、所要時間は長くなる。
静電容量が大きければ、極板が電荷で満ちるまでより多くの電荷が必要だから、所要時間は長くなる。
つまり、所要時間は抵抗値Rと静電容量Cの積に比例することになる。


抵抗値Rと静電容量Cの積を時定数τ(タウ)という。
時定数τの単位は[s](秒)だ。
以下の三つの式を相互に代入すれば、[Ω](オーム)と[F](ファラッド)をかけ合わせると[s](秒)になることが確認できる。
[Ω]=[V]/[A]
[F]=[C]/[V]
[C]=[A][s]


この時定数τは、スイッチを入れた直後から電圧が63.2%に到達するまでの時間を示している。
電源電圧が大きくなれば、所要時間はより長くかかる。
どんなに時間がかかっても、コンデンサの極板間の電圧が63.2%に到達するまでの時間はCR[s]なのである。


回路の特性を検討するときは、所要時間ではなく時定数τを利用する。
CとRの積なので、計算が楽だからだ。


なぜ、63.2%という中途半端な数値なのだろうか?
この値は自然対数の底eの値(2.71828…)の逆数なのである。


「円周の長さと直径の比率を3.1415にしよう」と決めた人はいない。
円周率πの値は、人間の意志とは無関係に、自然界にもともと存在する値なのだ。
円があれば、そこに必ず潜んでいるのである。


自然対数の底eの値も、同様に自然界にもともと存在する値である。
人間の意思とは無関係に過渡現象があれば、そこに必ずeが潜んでいるのだ。
CR回路を計算していたら、隠れていたeが、ひょっこり数式に出てきたに過ぎない。

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2006/01/27



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