コンデンサー技術入門[8]
HOME> 入門シリーズ>コンデンサー技術入門>E系列
E系列
製造の精度には限りがある。
どのような工業製品であっても、狙った精度で製造することはできない。
製造工程で、ばらつきが発生するからだ。
ばらつきが想定される範囲を許容差(誤差)という。
製造の精度を高めるには、設備や労力がより多く必要になる。つまりコストがかかるのだ。
精度が高い部品を求めがちだが、部品の価格も高くなる。
設計や開発には、コストの制限が存在する。
部品を選定するときは、諸特性(コンデンサの場合は静電容量等)の他に、許容差も考慮しなければならない。
コンデンサーの許容差や静電容量は、公的な規格で定められている。
公的な規格に準じた部品は、入手しやすくコストメリットもある。
メーカーとユーザーの双方にとって、恩恵があるのだ。
具体的な規格は、メーカーのカタログを見ればいい。
例えば許容差±20%のコンデンサーを調べると1.0pF、1.5pF、2.2pF、3.3pF、4.7pF、6.8pFが市販されていることが確認できる。
設計計算の結果、5.5pFのコンデンサーが必要であったとしても、5.5pFは入手できないのだ。
この静電容量の値の数列は、かなり奇妙だ。
端数ばかりで、キリのいい数字がない。
値が大きくなるにしたがいピッチが広がっていく。
この数列は、許容差±20%のケースである。
1.0pFのコンデンサは、ズバリ1.0pFの静電容量が保証されているのではない。
静電容量の真の値は1.0pF±20%( 0.8pF〜1.2pF)の範囲のどこかにあるのだ。
同様に6.8pFのコンデンサの真の値は6.8pF±20% (5.4pF〜8.2pF)のどこかにある。
許容差の範囲は、値が大きくなるほど、広くなる。
この許容差の範囲を、数列にオーバーラップさせると、許容差の範囲が相互に干渉していないのが分かる。
静電容量の値が大きいほど、ピッチが広がる理由がここにある。
許容差の範囲が相互に重ならないようにしているのだ。
もし、5.5pFのコンデンサーがあったとしてもそれは、無意味だ。
許容差の範囲が重なるからである。
高い精度で5.5pFの容量が必要な場合は、許容差±5%の規格品から、5.6pF±5%を選択すればいい。
上記では、許容差±20%のケースを論じたが、許容差±10%、±5%の数列も合わせて見てみよう。
スペースの都合で、縦方向の数列として表記している。
それぞれの数列には、名称がある。
± 5%の数列はE24系列、± 10%の数列はE12系列、±20%の数列はE6系列と命名されている。
E6系列は、0から10までの範囲を6個の数値でカバーしている。
E12系列は、12個だ。
Eの後に続く数字は、0から10までの範囲をカバーするために必要な数字の個数を示している。
これらを「E系列」と総称する。
どの系列も、値が大きくなるにしたがいピッチが広がっていく。
値が大きくなるほど、許容差の範囲が大きくなるからである。
許容差が小さい(精度が高い)ほど、系列を構成する値は多い。
許容差の範囲が狭いので、0から10までの範囲をカバーするためには、数値の並びを細かくしなくてはならないのだ。
E系列は、コンデンサの静電容量以外に、抵抗値でも適用される。
上記の例もふくめて、E3、E6、E12、E24、E48、E96、E 192が規格になっている。
E系列外の部品で設計すると、特注品になってしまう。
E系列は、設計前に十分に理解しておく必要があるのだ。
一方で、耐電圧はE系列を採用していない。
耐電圧は、安全に関わるので誤差によって決めるべきではないからだ。
耐電圧の規格は「標準系列」と呼ばれている。
■最初のページ:入門シリーズ:目次
スポンサーリンク
2006/01/27