物理学解体新書

核燃料サイクル

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[7]核分裂

原子炉の炉心部に燃料集合体を装荷し核分裂させる。
このとき生じる熱を利用するのが原子力発電だ。


燃料集合体は3年程度使用され、取り出される。
取り出されたものを使用済核燃料という。


使用済核燃料の成分は、装荷時と比較して大きく異なる。
核分裂反応の進行によって成分が変化したのだ。
変化の様子を図示した。
各成分の面積はおおよそのイメージであって、実際の成分比を忠実に表現したものではない。




ここでは使用済核燃料の各成分がどのように生成したのかを見てみよう。






これらを順次見てみよう。
◎分裂しなかった235U
これには多くの説明を要しない。 原子炉内部では一度にすべての235Uが反応するのではない。 少量ずつ反応するのだ。
使用済み核燃料を取り出した時点で反応しなかった235Uが残っていただけのことだ。


◎ 分裂で生じた放射性核種 これは大きく二つに分かれる。
[235Uの分裂で生じた放射性核種]
ウランは中性子を吸収し分裂する。
ウランの分裂によって、新たに原子核のペアが生成する。
生成する原子核の種類は、分裂した破片内の陽子数による。
例えば、陽子数が38個と54個に分裂すれば、それら原子核はSr(ストロンチウム)とXe(キセノン)だ。
その他にも、何種類かのペアが生成される。


ペアとなっている原子核の原子番号を合計すれば当然92、つまりウランである。 どのペアが生成されるかは確率に支配されるが、おおむね質量数(陽子数ではない)96位と140位付近が多い。
この付近がとりあえず安定しており、分裂時に陽子や中性子が一団としてまとまりやすい数なのだ。


使用済み核燃料の内部にはSr、Xeなどが含まれることになる。
元素は質量数が大きいほど、中性子の数が陽子の数に比べて多くなる。
陽子同士の反発に逆らって核をひとかたまりに維持するためには、より強力な核力が必要であるため、より多くの中性子が求められるからだ。


だから、ウランなどの重たい元素の分裂でできた核は、通常の核に比べて中性子が過剰ということになる。
中性子が過剰な元素は、安定な核へと落ち着くまでベータ崩壊を繰り返すため、放射線を出し続ける。
これらを放射性核種という。
使用済核燃料は放射能を持つということだ。




[Puの分裂で生じた放射性核種]
238Uは中性子を吸収しても分裂しない。
しかし、原子炉内にあって何も起こらないかと言えばそうではない。
238Uは中性子を吸収するとPuに転換するのだ。


そしてこのPuは中性子を吸収することにより核分裂を起こし、エネルギーを放出する。
分裂すればウランと同様に新たに原子核のペアが生成する。
Puの分裂で生じる原子核も放射性核種である。


なお、原子炉に新品の核燃料を入れた直後は、235Uの核分裂だけで熱を生じる。
しかし同一の核燃料で継続して運転していると核燃料内部にPuが蓄積され、その一部が分裂し熱を生じる。
3年程度継続すると、発熱量の1/3程度はPuの核分裂に伴う発熱である。




◎238Uから転換したPu
238Uは分裂しないかわりに、中性子を吸収し、以下のプロセスでPuへと変換する。
反応式
このPuも中性子を吸収して核分裂を起こすことは前述した通りだ。


しかし、中性子を吸収しなければ何に起きない。238Uから変換した後、燃料集合体を取り出すまで、中性子を吸収する機会がないままだったPuが使用済核燃料中に残ることになる。




◎Puに転換しなかった238U
238UのすべてがPuに転換するのではない。
Puへの転換の確率はきわめて低い。
238Uの大部分は、装荷時の状態でそのまま残ることになる。

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2005/05/18



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